かねてから遊んでみたかった『十三機兵防衛圏』のSwitch版が出たので、やっとプレイした。
かなり変わったゲームだが、結果的に”読書的”なゲーム体験が楽しめたと思ったので
本好きの人にも是非プレイしてもらいたい。という視点でレビューしてみる。
・長編SF作品が好きなひと
・複数のSF要素が絡む話が好きな人
・謎解き・ミステリーが好きな人
・青春がテーマの作品が好きな人
・声優が好きな人
・読書やアニメが好きでゲームもちょいやるひと←特にオススメ!
『十三機兵防衛圏』とは?
あらすじ
過去・未来を超えて描かれる十三人の少年少女の群青劇
人、時間、場所ー 複雑に絡み合う、時代を超えた物語
1985年、ある日突然隕石のように飛来してきた「怪獣」。
13人の少年少女たちは「機兵」と呼ばれる巨大ロボットに乗り、
「破滅の運命」に時を超えて立ち向かう。
引用元:『十三機兵防衛圏』Nintendo Switch版公式サイト
こんなゲーム
公式サイトのジャンル記載は「ドラマチックアドベンチャー」とあるが、
実際には2つのジャンルのゲームが合わさった珍しいタイプのゲームである。
①13人の主人公を選んで動かしながら物語を読み進めていくアドベンチャーパート「追想編」
②リアルタイムに攻めてくる敵から機兵というロボットで拠点を守る戦略RPG的なバトルパート「崩壊編」
これをいったり来たりしながら、メインストーリーの核心に迫っていく。
ゲームの進行を整理するアーカイブパート「究明編」もあり、複雑な物語をいつでも振り返ることが可能。
難易度は総じてそこまで高くない。(クリアまでの所要時間30〜40時間程度)
口コミで広まって多くの賞を受賞
PS4で発売された2019年当初、3万本程度のほどほどの売れ行きから口コミで徐々に評判が広まり、
Switch版が発売された2022年には「日本ゲーム大賞優秀賞」をはじめ多くの賞にノミネート、受賞を果たしている。
SFの優秀作品が世界中から選出される「星雲賞」にもノミネートしており、SF業界からの評価も高い。
“読書的”な楽しみ方ができる
すでにコアなファンによって多くが語られている作品なのでシステム的な魅力などは割愛し、
この記事では個人的にいちばんの魅力だと思ったポイント”読書的”な楽しみ方を軸に紹介していこうと思う。
謎展開と考察の余白が読書的
本作のメインはずばり圧倒的にストーリーを読み進める「アドベンチャー」パートである。
13人の主人公から自由に選び「クラウドシンク」というキーワード型の選択肢を当てはめながら、
キャラごとのショートストーリーを少しずつ読み進めていく。
中には放課後や教室での数時間を何度も繰り返す人物がいたり、突如として時空を飛ばされて完全な「?」になってしまう展開があったりと、主人公や進行具合によってストーリーはてんでバラバラ。
最終的には全員のストーリーを一本の筋に集約させていくのだが、そこに至るまでには平易な短編集を読み進めるようにはいかない。そこがこの作品の歯応えでもあり一番のおもしろさでもある。
最初は何もかもわからない記憶喪失のような状態で戦場に投げ出されるところからとスタートする。
ストーリーが進むにつれ「なぜこの人物はそれに動じないの?」とか
「この人って何者?さっきの人とは別人?」など多くの謎がつぎつぎと押し寄せる。
ひとつ解明したかと思ったらまた次の謎。まったく別軸からの新要素、同じ人物の別展開、
などとにかく多層的に押し寄せるストーリーに振り回される。
読書でいう「ページを繰る手が止まらない」状態でどんどん読み進めたくなる展開。
ゲームをやっていないときでもいちいち考察がとまらなくなる。
抜け落ちた部分を早く知りたくて、でも自分で考えるのも楽しくてクセになる。
そこが非常に読書的でおもしろく、没入してしまった。
壮大な世界観や人物の感情を脳内補完
このゲーム、水彩アニメ調のグラフィックが美しく、タッチも色使いもエモいのだが、
アングルがほぼ正面に固定されていて、奥行きも限定的な2D展開。
バトルパートに至っては、ほぼ線画で構成されているなど、
グラフィックについてはやや単調とも感じるほどの“削ぎ落とし”が特徴的だ。
個別の人物のストーリーをとっても、たとえば一人の進行度を100%にしたところで
その人物のすべてを理解できるわけではない。ある覚悟をしたときの葛藤や
時や場所を超えた人物やモノに対する感情の重さなど、こちらの想像の余白が多く残される。
“描きすぎない”ことによって、プレイヤーは読書的な脳内補完を行うことになるのである。
当たり前の日常が崩壊していく寂寥感、脇役を含めた人物たちへのさまざまな感情、など
(この何気ない日常の意味って…この人はどんな思いでそれを…etc)
この自分だけの脳内補完が、読書をしていて感情が揺さぶられる感覚にとても似ている。
ゲームで言えばドットRPGのストーリーにグッときていた世代には馴染み深い感覚かもしれない…
読書では味わえない楽しみ方ができる
とても読書好きと相性のよいゲームだと思うのだが、ゲームならではの要素がそれをうまく補完している。
自分だけのルートで組み上がっていくストーリー
人物や進行によってストーリーはバラバラだが、それに加えて同じ主人公を進めていても、
時系列がバラバラに各ストーリーが配置されている。
そして前半は謎のまま進行していたバトルもその意味が解明され、ストーリーに関わってくる。
このバトルも含めて自分だけのルートで結末にたどり着くという体験は、このゲームでしか味わえない。
必ず誰かを好きになれるキャラの魅力
自分だけのルートにも関係するが、ストーリーを進めていくと13人の主人公それぞれの存在と
それに関わってくる脇役も、どんどん意味を持ってくるようになる。
最初は何者だかわからなかったり、煩わしかったりする人物が自分のペースで進むにつれ、
どんどん深い意味をもっていくことは、プレイ後に意外な面白さだと感じた。
最初は「出番が少ないパイロット」ぐらいに思っていた主人公の一人が、
その正体や本当の人間関係が判明していき、バトルでの成長をともにするにつれ、
エンディングを迎える頃には一番好きになっていた。なんてことも起きる。
やらないと意味不明だと思うが、ぜひ実際にプレイして誰かに深く感情移入してみてほしい。
SF作品としても青春作品としても広く楽しめる
星雲賞や文化庁メディア芸術祭などにも選出されているように、この作品の評価はゲームの枠を超えている。
SF作品としては、タイムリープや並行世界、AIやロボット、それにネタバレになるから伏せるが
重要な技術的要素が多数取り入れられ、幅広くSF好きを満足させる内容になっている。
ハードSF的な難解さも一部あるが、そこは適当なのか!とツッコミを入れたくなるようなゆるさや
人間らしい粗(あら)もあったりと、SF初心者も置いてけぼりにしないバランスが見事だ。
戦前の過去から2064年の未来まで、あらゆる時代から集った高校生の青春模様も、
話が進むにつれてどんどん味わい深いものになっていく。
全体的にバラバラなゲームであるがゆえに、突然自分の中で意味を結んだときの感動は大きい。
そして全員のストーリーを100%にした後の最後の大仕掛けとエンディングはぜひ味わってみてほしい。
(おまけ)バトルで詰まないためのプチ攻略
読書好きの視点でこのゲームをおすすめしてきたが、ライトゲーマー最大のハードルになるのが「崩壊編」の攻略だ。
ここで詰まってせっかくのストーリーが楽しめない!なんてことにならないように、簡潔に攻略法を記しておく。
めんどくさくなったら遠慮なく《カジュアルモード》へ
バトルの難易度はいつでも調整可能。敵が強いと思ったら遠慮なくカジュアルモードに変更してバトルはサクッと攻略しよう。セリフまで早送りしないように注意!
機兵の出撃はバランスよく
攻撃的な機兵や好きな主人公ばかりを成長させていると、途中で攻略に行き詰まることも。
後半は総力戦になっていくので、機兵は序盤からバランスよく出撃させよう。
機兵の役割をシンプルに理解しておく
機兵は四種に分かれており、バトル中の役割はだいたい決まっている。
第一世代〈近接型〉:大物を殴りにいく係。後半は対空防御も。
第二世代〈万能型〉:ガーディアン(囮)を出したり、回復や敵の弱体化など。火力は弱め。
第三世代〈長距離型〉:レールガンでザコを一掃。大物も巻き込んでとにかく破壊!
第四世代〈飛行支援型〉:機動力が高い攻撃係。回復や支援もできるが、後半は大物とのタイマン係。
縛りのあるステージ意外は、ほぼ四世代をバランスよく出撃させていれば大丈夫。
ターミナルの強化は優先
後半になるほどターミナル(メタシステム)が使う技「メタスキル」が重要になる(全体回復や全体シールドなど)
機兵スキルのボトムアップもできるので、ターミナル機能は積極的に上げておこう。
後半は使う技のみ優先してレベル上げ
後半になると敵が硬くなり、攻略法が限定されてくる。以下のスキルを優先的に上げて対処しよう。
対空防衛フレア(第一世代など):空を飛ぶ敵やミサイルなどをブロック。中盤以降で重要度が増す。
デモリッションブレード(第一世代):序盤から終盤まで頼れる近接スキル。
ガーディアン系(第二世代):敵の大群を引き寄せる囮り。拠点のダメージを大幅に軽減できる。
レールガン系(第三世代):多くの敵を巻き込める主砲。序盤から終盤まで活躍。
レッグスパイク(第四世代):シールド無視の蹴り技。終盤は大型への攻撃がほぼこれ一択になる。
そのほかは回復やミサイル、チョバム装甲などの固有スキルをバランスよく上げよう。
楽なステージでレベル稼ぎも可能
「あともう少しこのスキル上げたいのに!」というときは、第一エリアなど楽なステージで再戦しメタチップ(経験値)を稼ぐことも可能。RPG慣れしている人には当たり前かもしれないが”詰み対策”のひとつとして。
ちなみにメタチップは「追想編」を進めることでどんどん溜まるので、あまり無駄遣いしなければ枯渇する心配はない。おそらく。
まとめ
かなり個人的な視点で紹介してみたが、この作品はSF好きな多くのひとにゲームとして体験してほしいと改めて思う。
既に漫画化もされており、アニメ化の噂もある。多くの人が共通体験として味わえるのもいいが、
個人的な進め方をして、人と同じところにも違うところにもグッとくる。
そんな可能性が無数に秘められているところが『十三機兵防衛圏』の他にはない魅力だから。
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